メッセージ - ろばのあご骨(士師記15:9-20)
礼拝説教メッセージ音声:ろばのあご骨(士師記15:9-20):右クリックで保存
『そこでペリシテびとは上ってきて、ユダに陣を取り、レヒを攻めたので、ユダの人々は言った、「あなたがたはどうしてわれわれのところに攻めのぼってきたのですか」。彼らは言った、「われわれはサムソンを縛り、彼がわれわれにしたように、彼にするために上ってきたのです」。』(士師記15:9-10)
最初は、サムソンとペリシテ女との個人的な結婚騒動だったが、事は大きくなり、部族的な抗争にまで発展した。
『そこでユダの人々三千人がエタムの岩の裂け目に下って行って、サムソンに言った、「ペリシテびとはわれわれの支配者であることをあなたは知らないのですか。あなたはどうしてわれわれにこんな事をしたのですか」。サムソンは彼らに言った、「彼らがわたしにしたように、わたしは彼らにしたのです」。』(士師記15:11)
サムソンの言い分も、ペリシテ人の言い分も、相手がやったから自分も同じようにしてやるのだ、というものである。
今でも世界中で行われている抗争は、大体そのようなものであるが、そもそも今回の事は、サムソンが律法に反する事をしなければ起こらなかったものだ。
彼が両親の戒めに聞き従い、異邦の女をめとろうとしなければ、そして、一度苦い経験をしたのだから、それに懲りて、女の所に戻らなかったなら、このような事にはならなかったはずだ。
ユダ族は、士師の時代の初期はまだ健全な信仰を保っていたのに、「自分よかれ」の時代が長びくにつれ、彼らの信仰も地に落ちてしまった。
もし初期のユダ族だったなら、カレブやオテニエルにならって、自ら進んで敵地に攻めこんで行ったであろうし、あるいはサムソンと力を合わせてペリシテに戦いを仕掛けていたであろう。
それなのに彼らは、今はペリシテ人が自分達の支配者だ、なぜ彼らの機嫌を損ねたのか、と、サムソンを責めている。
彼らのやり取りには、主への言及は一切無く、信仰が地に落ちてしまったのが分かる。
ともかく、ユダ族はサムソンには手を出さない事を合意の上で、サムソンは強固に縛られた状態でペリシテ人の元へと連れて行かれた。
『サムソンがレヒにきたとき、ペリシテびとは声をあげて、彼に近づいた。その時、主の霊が激しく彼に臨んだので、彼の腕にかかっていた綱は火に焼けた亜麻のようになって、そのなわめが手から解けて落ちた。彼はろばの新しいあご骨一つを見つけたので、手を伸べて取り、それをもって一千人を打ち殺した。』(士師記15:14-15)
実に、すさまじい力である。それは「主の霊が激しく彼に臨んだ」ためだ。
主は確かに、一人が一千人の敵を追い払う事が出来る、と言われたが、しかしそれは御言葉を固く守って右にも左にも逸れず、異邦の者と結婚しない事が条件だった。(ヨシュア記23:6-11)
それにもかかわらず、彼がそのように出来たのは、ただ主の一方的なイスラエルに対する憐れみによる。
『そしてサムソンは言った、/「ろばのあご骨をもって山また山を築き、/ろばのあご骨をもって一千人を打ち殺した」。彼は言い終ると、その手からあご骨を投げすてた。これがためにその所は「あご骨の丘」と呼ばれた。』(士師記15:16-17)
「ろば」のヘブライ語「ハモル」には、「ひと山」の意味もあり、この個所は「ハモルのあご骨でハモルを築いた」と、韻を踏んだ詩のようになっている。
ちなみに、ろばは、聖書の他の個所を見ると、イエス様をエルサレムへ運ぶ事ために選ばれたり、また、気違いの預言者バラムを滅びから救ったりと、主のしもべのような形で用いられている。
『時に彼はひどくかわきを覚えたので、主に呼ばわって言った、「あなたはしもべの手をもって、この大きな救を施されたのに、わたしは今、かわいて死に、割礼をうけないものの手に陥ろうとしています」。そこで神はレヒにあるくぼんだ所を裂かれたので、そこから水が流れ出た。サムソンがそれを飲むと彼の霊はもとにかえって元気づいた。それでその名を「呼ばわった者の泉」と呼んだ。これは今日までレヒにある。』(士師記15:18-19)
彼が主に呼び求めた記述は、ここが、初めてである。
普段、主を全く呼び求めていなかった者が、危機に陥った時、思い出したかのように主に助けを求めると、主は答えて下さって助け、潤いを与えて下さった。
私達にも、身に覚えが無いだろうか。
普段から主を軽んじ、何度も主を裏切り、行いにおいても心においても、憐れみを受けるに相応しくない者なのに、わずかばかりの信仰をもって主を呼び求めると、主は応えて下さり、助けて下さり、潤いを与えて下さった。
死んで、骨となり果てたろば(主のしもべ)のようであっても、主はそのあごを大きく用い、強力な敵を討ち取らせて下さった。
全くもって、主は憐れみ深いお方であり、私達はただ、その御前にひれ伏すしか無いのだ。