メッセージ - サムエル記概要(1サムエル記1:1-2)
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本日より講解説教は第一サムエル記に入る。
このサムエル記は、それまでイスラエルの国全体を統治する者がいなかった士師の時代から、王によって統治される時代への重要な転換点が記されている歴史書である。
サムエル記は元々、列王記と共に一つの歴史書だったものが、分割されたものであり、ギリシャ語聖書の70人訳聖書では、第一・第二サムエル記を「王国の第1・2」と、列王記は「王国の第3・4」とされている。
この書の名前は、その登場人物・サムエルから取られている。
サムエルの名前の意味は「名は神」であるが、この名前を分解すると「シェムー + エル」で、シェムーは「聞く(シャマー)」の受動態分詞、エルは「神」の意味である。
すなわち、「神に聞かれた」「神に尋ねられる」という意味になる。
「神は聞かれる。」
これはサムエル記にとって重要なキーワードであるばかりでなく、聖書全体でも、そして、私達の日常においても、そうである。
聖書の書名は、人物の名から取られる事は多いが、サムエルという人物は、1-8章の所にしか登場しない。
9−15章はサウル王が、そしてサムエル記の大部分、16章以降から2サムエル記の終わりまでは、ダビデ王が主役となる。
だから「サムエル記」と言うより「ダビデ記」と題したほうが良いのでは、と思うかもしれない。
しかし、そのダビデに油を注いで王として任職したのも、また、初代の王サウルに油を注いで任職したのも、サムエルである。
彼は士師としては最後であり、イスラエル全体を導く預言者の最初であり、そして、王たちを任職する祭司として、とても重要な役割りを担った。
そのサムエルを生んだのは、一人の不妊の女・ハンナであるが、サムエルの誕生は、彼女の、言葉にならないような、人に聞かれないような、密かな祈りから始まった。
社会的に立場の弱い、寡婦や不妊の女の祈りによって、イスラエルの歴史を動かす重要な家系や人物が生み出される点は、ルツ記も共通している。
そして聖書は、そのような「逆転劇」に満ちている。
実際、バプテスマのヨハネの母エリサベツも、イエスの母マリヤも、イスラエル民族の父アブラハムも、子が生まれるはずが無い者が、神の大いなる力によって産み、その後の霊的歴史を大きく動かしている。
『「子を産まなかったうまずめよ、歌え。産みの苦しみをしなかった者よ、声を放って歌いよばわれ。夫のない者の子は、とついだ者の子よりも多い」と主は言われる。「あなたの天幕の場所を広くし、あなたのすまいの幕を張りひろげ、惜しむことなく、あなたの綱を長くし、あなたの杭を強固にせよ。あなたは右に左にひろがり、あなたの子孫はもろもろの国を獲、荒れすたれた町々をも住民で満たすからだ。
恐れてはならない。あなたは恥じることがない。あわてふためいてはならない。あなたは、はずかしめられることがない。あなたは若い時の恥を忘れ、寡婦であった時のはずかしめを、再び思い出すことがない。あなたを造られた者はあなたの夫であって、その名は万軍の主。あなたを「あがなわれる者(ゴエル)」は、イスラエルの聖者であって、全地の神ととなえられる。』(イザヤ54:1-5)
この「あがなわれる者(ゴエル)」は、ルツ記においてはボアズであり、そして私達・全人類にとっては、万軍の主である。
ルツ記も、サムエル記も、主に信頼する不妊の女や、夫のいない女の祈りから始まり、彼女達が生み出す子がその後の歴史を大きく動かしている。
彼らは主しか頼りどころがないため、主はよく彼らの祈りを聞かれるのだ。
イスラエルの王達は、そのような女達、主に寄り頼む男達の祈りによって、生み出されてきた。
サムエル(神は聞かれる)記。
この書から、主はどのように人々の祈りを聞かれ、主に寄り頼む者にはどのような幸いが待っているのか、また、その主をないがしろにするなら、どんな災いが待っているのか、この書から見て行きたい。